ぎっくり腰をマッサージで治したら、すぐ再発した

マッサージ

結論:手技の目的に応じた選択を間違っている。

大前提として、「セルフマッサージなのか?」、「プロのマッサージなのか?」という施術者の技術的な問題はないものだと仮定します。

やり方そのものは問題がないのです。

にもかかわらず、ぎっくり腰がすぐ再発したとしたら何が考えられるのでしょうか?

技術のチョイスの問題

一つとしては、用いる技術のチョイスの問題があります。マッサージと一口に言っても、手技にはいくつかのものがあります。按摩師の学校ではたぶん以下のものを教わります。

  • 擦る(さする)
  • もむ・こねる
  • 叩く
  • 揺らす
  • 押す
  • 伸ばす(ストレッチ)

マッサージは大きく分けると上記の6手技によって成り立ちます。この6つの手技を組み合わせて様々な独自の技術がなりたちます。

それぞれの技術にはどういった効果の違いがあるのか?この違いを把握した上で状況に応じて使い分ける必要があります。

このチョイスを誤ると、良くなりませんし、逆に悪化する場合もあります。患者自身の体の状況を正確に見極めるのもある意味では技術でしょうし、どの手技をチョイスするのかも腕のひとつだと思います

チョイスや状況の見極めなく、ただモミモミしても、良くはならないでしょうし、逆に悪化することもあるでしょう。

では、基本6手技にはどういった作用の違いがあるのでしょうか?

軽擦法

・擦法は軽く擦る方法と、強く擦る方法に分けられます。軽擦法は、治療の開始と終了の場面に用いることが多いです。軽擦法の目的は、一番は患者の反応を調べることです。患者さんによっては過敏な反応をする方もいます。順当に考えると最初は軽く擦って患者の様子を見て、徐々に強く刺激を与える手技へと移行することが適切だと言えます。最初から様子を見ることなくタイ古式マッサージのようなストレッチを用いるのは、患者さんも驚きます。最初の段階で軽く擦って患者の反応を確かめることで、治療法のチョイスを判断するわけです。このチョイス無しで、最初からストレッチをするのは、通常ではありえません。あるとしたらよほど通いなれて親しんだ治療院に限られます。

皆さんが治療院に通院したときに、最初から強めにギュウギュウと押してくる院でしたら、様子を見ていない治療院です。患者の100人のうち60人は、不愉快な思いをします。そして、2~3人はその院をハッキリと批判します。

治療効果としては皮膚感覚による興奮のコントロールです。例えば患者が怒りや攻撃的な感情を抱いていたとします。
怒り
興奮した人に軽擦法を用いると、沈静作用があります。逆に涙を流して悲しんでいたり、不安や恐怖を抱いていたとします。気分が沈んでいるとします。
悲しみ

こういったときに軽擦法を適切に用いると、沈んだ気分が高揚し、感情が安定します。皮膚は感覚が敏感なので、皮膚感覚を刺激し、精神の安定を図ります。安定すると、リラックスします。人はリラックスすると、皮膚の血管が開いてきます。そしてホンワカと体が温かく感じます。昼下がりの午後に眠くなるように、リラックスすると体が心地よくなってきます。軽擦法は医学的な効果そのものよりも、どちらかというと精神面に与える影響が大きいと言えます。

強擦法

強くさする方法です。手のひらで円を描くように押しながら擦っていきます。主な医学作用は病的産物の粉砕です。そして粉砕した病的産物をリンパへと押し流します

病的産物とは、患部に蓄積した以下のものです。

  • 疲労物質、
  • 老廃物、
  • 発痛物質
  • 炎症成分

これらが体の痛みの原因となります。体内から速やかに除去することで腰の回復が促進されます。病的産物が蓄積しすぎると、頻繁に腰が痛くなったり、良くなったりを繰り返すようになります。回復力が落ちると、そのうちに毎朝起床時に腰が痛くなったりします。病的産物が蓄積しすぎていると言えます。

強擦法では特に注意が必要なのは体毛です。体毛の濃い人は事前に剃毛したり、オイルを用いて滑りを良くしましょう。体毛をひっぱられると痛くてリラックスもできません。

体毛はマッサージを受けたときや、湿布を貼るときに皮膚を刺激します。また運動中の集中力をそいでしまったり、チクチクと違和感をもたらすこともありますので、治療においては注意を払うものの一つです。

また、病的産物を粉砕する方法は他にもありますが、粉砕した病的産物をリンパへと誘導して体内から除去しないと、体内に病的産物が残り続けてしまいます。これではすぐにぎっくり腰が再発したとしても無理はありません。やはり、せっかく粉砕した病的産物は体内からしっかりと除去することが大切です。

揉捏法

揉捏法(じゅうねつほう)とは、もんだり、こねたりする方法です。主に筋肉に作用させます。これも病的産物を破壊します。筋肉を対象として疲労回復を図るにはこの方法が良いです。筋肉を絞るように揉むことで血流の循環も促されます。老廃物も除去されます。他の手技にない特徴は、血流の循環作用です。例えるなら給油ポンプのように血流を活発にします。スポーツの試合などで短時間の疲労回復を目指すなら揉捏法でないと十分な効果が得られません。

揉捏法は、主に腕や足、クビなどの細い部位に有効です。腰のような太い部分は揉捏法では処置しずらいです。しかし、腰は直接処置できなくても腕や足をゆるめると、全体が緩みます。結果的に腰の緊張も抜けます。

つまり揉捏法は、乳しぼりのように筋肉を揉んで、患部への血流運搬を活発にする作用に秀でていると言えます。一旦体が疲れ切ったときには、筋肉の回復には揉捏法が優れているわけです。

叩打法

叩打法(こうだほう)はタントンと叩く方法です。皆さんも、おじいさんやおばあさんの、肩たたきをしたことがあるでしょう。手をグーにして拳で叩いたり、手刀を作って叩いたり、両手を合掌して叩いたり、叩き方には種類がありますが、マッサージの先生にとっては、一番の腕の見せ所になる手技が叩打法です。技術の差が一番浮き彫りになります。ベテランの先生になるほど叩打法を多用します。

医学的には細胞組織の活力を高める作用があります。簡単に言えば元気にする作用が高いです。他には他の手技と同じく病的産物を粉砕したり、軽擦法や強擦法の効果もあります。ただし、揉捏法のような循環を促す作用はありません。疲れてグッタリした組織を元気にしますが、疲労を回復させるための循環を促さないと、叩くだけでは、後々余計に疲れてしまいます。

マッサージを受けた翌日にぐったりと疲れた経験のある方は、揉捏法が足りないのだと言えます。

腰が重くてだるいときには叩打法によってリフレッシュするのが正しいチョイスです。

振戦法

振戦法(しんせんほう)とは、揺らしたり、ブルブルと振動させる方法です。大きくゆっくりと揺らせば軽擦法の作用がありますし、小さく早く揺らせば強擦法の作用があります。揺らす大きさを調整することで部分的に揺らしたり、全体的に揺らしたり、「揺らす」方法一つだけでかなりの手技の作用を果たすことができます。

もしも「1つの手技だけで治せ!」と指定されるなら、僕だったら振戦法をチョイスします。全体を大きく揺らす手技を選択するでしょう。それだけ揺らす方法は汎用性が高い技術です。

例えば電車でも、ガタンゴトンとリズミカルに体を揺らされると、ウトウトと眠くなってしまいますよね。赤ちゃんだって、ゆりかごでスヤスヤと寝入ってしまいます。人は適度に揺らされることに心地よさを感じるものです。つまり、汎用性を重視した技術です。

圧迫法

圧迫法は、押す方法です。指や手のひらなどで押すのが一般的です。一番の目的は脊髄反射のコントロールです。体の痛みの多くは脊髄反射といって、危険が迫ったときに筋肉がとっさに反射を起こすことで痛みが起こります

例えば、画びょうを足で踏みそうになったとします。針先が足に刺さった瞬間に反射が起こります。針先が触れた瞬間に
「ビクッ」
と、足が引っ込みます。人にはこういった反射が無数に備わっています。反射は危険を回避するために不可欠なものです。ところが、反射が過剰になってしまうと、意味なく、炎症している患部に刺激を与えてしまいます

患部に刺激を与えず放っておけば痛くないのに、足裏に物が触れるたびに、
「ビクッ」
と、大げさな反射が起これば、患部の安静を保つことができません。ぎっくり腰の患者さんでも、たいていは反射が過剰になっています。手がプルプルと震えて常に上半身に反射的に力が入っていたり、腰の痛みの恐怖によって足がガタガタと震えていたり、過剰な反射が痛みを何倍にも増強しています。

圧迫法は、患部の神経ネットワークを遮断する働きがあります。例えるなら家電製品で言う「コードを抜く」ことに例えられます。電子機器が夏場に熱暴走を起こしたら、ひとまず電源を落としたり、コードを抜きますよね。

圧迫法は神経のネットワークを押して圧迫し、遮断することでオンラインの状態から、オフラインへとします。オフラインとなることで、過剰な反射が失われます。これによって炎症している患部に加わる反射が失われるわけです。

たびたび、ぎっくり腰というと、
「それは怪我だから治らないんでしょう」
「ぶっ壊れた組織は治るのに時間が掛かるんでしょう」
と、治療の必要性を否定的に考える方も多くいます。確かに靭帯が断裂していたり、筋肉が肉離れしていれば、それ自体はすぐに治りません。しかし、患部の神経ネットワークをオフラインにすることで、痛みの大部分は沈静します。

極端な話をすれば、仮に腰骨を骨折していても、痛み無く松葉づえで歩ける方も大勢います。体の痛みは怪我そのものではなく反射によって引き起こされているのです。例えるならスマートフォンのアプリの調子が悪い時を思い浮かべてください。9割の不調は電源を入り切りすることで復活するはずです。人の体もオフラインにすることで、復帰時に神経系の働きが正常化します。

他には圧迫法は、強擦法などの病的産物の粉砕効果もあります。

伸張法

いわゆるストレッチです。筋肉には筋紡錘という筋肉の線維の長さを調整する装置があります。疲れてくると、筋紡錘の働きが過剰になります。また、疲労がピークを過ぎると、今度は筋紡錘は働きが悪くなります。

筋紡錘の働きが過剰になると、運動中に肉離れをします。筋紡錘の働きが過剰になっているときに、不意に腰を曲げると、簡単にぎっくり腰になります。

ぎっくり腰になった方のエピソードでは、しばしば、座っていて立ち上がる場面で腰が痛くなったと言います。椅子から立ち上がる動作を分析すると、以下のような4つの行程で立ち上がります。
立ち上がる動作の分解
ほとんどの方は立ちあがる動作の②の、腰を前傾した場面で、硬直した腰の筋肉を急に引っ張って腰を痛めてしまいます。じっと座って同じ姿勢でいると、だんだんと腰の筋肉の筋紡錘の働きが過剰になるからです。

こういった方だと立ち上がる前に簡単なストレッチをして、筋紡錘の興奮を下げるとぎっくり腰の発生をほとんど防げます。ただし、筋肉は何百種類もあります。解剖学的な理解をし、筋肉の付着部である「起始」と「停止」を引き離すように操作しないとまったく意味がありません。
筋肉の起始と停止
基本6手技の中では一番安易に取り組める反面で、一番難しいのがストレッチだとお思いください。また、筋肉の中には、ストレッチでないとアプローチの難しいものもあります。例えば腸腰筋と呼ばれるお腹の深部にある筋肉はストレッチだとほぐしやすいです。

まとめ

どうでしょうか?マッサージでぎっくり腰が再発した方、自分でセルフマッサージをして「良くならない」とお思いの方、マッサージと一口に言っても奥が深いことがお分かりいただけましたか?

ほとんどの方は、自分の思うままマッサージをしていますが、用いている手技を理解していないはずです。また、用いる場面も適切なものか分かっていないはずです。マッサージには様々な目的や用途があるため、奥が深いわけです。そして、患部の状態や、患者の不調の背景にある病気や体調の状態について正しい生理学的な理解も求められます。これらの理解がない状態でマッサージをしても十分な効果は得られないことでしょう。

では、今回のまとめです。マッサージの固有の手技の用途は以下のものになります。

◆マッサージの手技の固有の用途

  • 擦る
    • 軽擦法:体の反応を調べる、皮膚感覚を利用した興奮のコントロール
    • 強擦法:病的産物の粉砕、リンパ誘導
  • 揉捏法:血流循環
  • 叩打法:細胞組織の活力を高める
  • 振動揺法:他の5法のあらゆる要素が含まれ、汎用性が高い
  • 圧迫法:神経ネットワークの遮断による脊髄反射のコントロール
  • 伸張法:筋紡錘の興奮コントロールによる、筋肉の負傷の防止

つまり、
「モミモミモミ」とセルフマッサージをし、
「マッサージじゃあ治ないよ!」
悩む男性
と嘆いている、中高年の方々は、マッサージが悪いのではなく、手技の特性を理解していないことが一番の問題だったわけです

当院の手技療法を利用して多くの方が腰の痛みを改善しております。長年続く腰痛や、ぎっくり腰にお困りの方はぜひアークス整体院をお求めになってください。