痛みの概念

痛み

著作者:
justine-reyes

結論:痛みは単なる刺激ではない。感情を変化させたり、行動を変化させたりする。

〔目次〕

  1. 痛みとは何なのか痛みの治療のために頑張るけど痛みそのものが何であるかを知らない。
  2. 一般的な痛みの認識多くの方が思う痛みは疼痛刺激のこと
  3. 疼痛刺激の正体疼痛刺激そのものは単なる電気信号
  4. 疼痛刺激以外の要素①情動の変化痛みを受けると必ず心理的な変化をもたらす。
  5. 情動の変化と痛みの相関関係精神的苦痛も痛みを引き起こす。
  6. 心理的な痛みの現状情動の変化を薬で安定化させても痛みはしつこく繰返す。にも関わらず抗不安薬の処方を受けるだけの患者は多い
  7. 痛みの新たな捉え方患者の〔疼痛行動〕も含めて痛みと捉える。腰痛患者がとる特徴的な行動が腰痛を悪化させている。消極的な行動が体を弱らせてしまうこともある。
  8. 新たな治療の着眼点疼痛行動も含めて治療する考え方を認知行動療法と呼ぶ
  9. 認知行動療法の内容認知のゆがみに気づいたら、実際にフォローしながら動作を体験してもらう。
  10. 治療の考え方患者の行動を改善せずして成し得る治療はない。
  11. まとめ大切なポイントは疼痛行動と認知行動療法

全体概要:腰痛の治療ではそもそも痛みが何であるかに着目し、痛みの概念を知るべき。痛みは単なる疼痛刺激のことだけを意味するのではなく同時に情動の変化をもたらし、情動の変化が精神的苦痛を生じさせて交感神経に作用して痛みをもたらすこともある。また、仮に精神的な安定が得られても痛みは改善されないため、もう一歩踏み込んで患者の疼痛行動に着目することが必要。痛みの原因となる動作や痛みによって引き起こされた閉鎖的な暮らしなどに着目し、なぜ痛みが起こったのかという認知のゆがみに築いてもらい行動を改善する認知行動療法が求められている。どのような治療法も患者の行動に働きかけなければ治療効果にはつながらない。

痛みとは何なのか

今回は痛みとは何なのかという根本的な痛みの概念のお話をさせていただきたいと思います。長年の腰痛をお持ちになられている方は様々な治療を受けてこられたことです。

鍼灸ときには鍼やお灸

整体ときにはカイロプラクティックや整体

ところが治療を受けたそのときには軽くなりますがしばらくすると痛みが戻ってしまうものです。

ではどうして痛みの治療をしているのに痛みが治らないのか。

ここに大きく関係しているのは、そもそも痛みとは何なのか?ということです。

皆さんは何とかして腰痛を治したいと思うのですが、そもそも敵である痛みのことをほとんど知りません。

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一般的な痛み:多くの方が思う痛みは疼痛刺激のこと

では痛みとは何なのか?

きっと皆さんが思う痛みとは「ビリッ」とか「ズキン」とか「ジクジク」という感じの疼痛刺激のことだとお思いになられることです。

腰を痛める腰を痛めれば当然のことですが腰にズキンとした疼痛刺激が現れます。この疼痛刺激にお困りになられているためそれを治してもらおうと様々な治療を受けられるわけです。

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疼痛刺激の正体:疼痛刺激そのものは電気信号

ところがこの疼痛刺激は、単なる患部の感覚センサーで生じた電気信号でしかありません。それが電線に当たる神経を伝わって脳に送り届けられるため脳で痛みを訴えます。

患部に備わる感覚センサーに炎症物質や発痛物質が結び付くことで痛みの感覚センサーが電気信号を発します。皆さんがお受けになられている治療ではこのときに生じた電気信号そのものに対して治療をしているわけではありません。

罹患部位に備わる感覚センサーに発痛物質が結び付かないように様々な治療法によって血流を良好にすることでセンサにー発痛物質の結び付くことを防止しているだけなのです。

疼痛刺激痛みは発痛物質が患部の痛みセンサーに結び付いて電気信号を発生させてその電気信号が脳に届くことで「痛い」と感じているわけです。マッサージなどの治療では血流を良好にすることで患部の発痛物質を洗い出して痛みセンサーとの結びつきを防止します。

決してマッサージや治療が患部の修復をしているわけではなく、あくまでも感覚センサーの疼痛信号が発するのを防いでいるだけなんですね。

だから治療を受けたそのときには血流が良好になるため随分と症状が楽になることもあるのですが、数日も経てばその効果は薄れてしまい痛みの刺激が再び現れます。

痛みを治療しようと考えていてもこの疼痛刺激の発生だけを防止しようという治療では根本的には良くなりません。

なぜ痛みがもたらされるのか?もっと広い意味で捉えなくては治療には結び付かないのです。

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疼痛刺激以外の要素①:痛みは情動の変化をもたらす。

そこで痛みという電気的な信号だけに着目するのではなくもう一歩踏み込んだ考え方として痛みは情動の変化をももたらすものだという考え方があげられます。

皆さんは慢性腰痛をお持ちになられる方だったり、ぎっくり腰を患った方だったり、病院で重篤な腰部の疾患を診断されている方だと思います。中には「原因が分からない」という診断を受けられた方もおられるはず。徹底的に検査を繰返して最終的に精神病だと診断された方もおられるのではないでしょうか。

すでに様々なネットや本で腰痛の80%以上が非特異的腰痛症(原因が分からない腰痛)ということが言われていることをご存知なはずです。

恐怖痛みは目に見えません。特に腰痛を患っておりますと外観からはほとんど健康な人とは区別がつきません。そのため原因が分からないとされやすく、ときとして精神病扱いされてしまうことも珍しくはないのです。

そして精神病扱いされてしまう理由として、痛みは疼痛刺激と同時に感情を変化させて気持を浮き沈みさせてしまうからです。何らかのネガティブな情動の変化を必ず伴います。少なからず痛みを味わって気分が高揚する方は変人でしょう。つまり、感情の変化を含めて痛みと呼ぶことが出来ると言えます。

腰痛を患ったときに「先生、私は大丈夫ですよね」と心配そうに訪ねる方は、心理的に心配だからそのように質問されるのではなく、痛みによって不安な心理に陥るためそのようにお思いになられているわけです。痛みによって精神をコントロールされているとも言えるでしょう。

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情動の変化と痛みの相関関係:精神的苦痛も痛みを引き起こす。

そしてこういった情動の変化からもたらされる精神的な苦痛は実際に痛みを引き起こす原因ともなります。人は精神的に辛いときや苦痛を感じたときには脳が興奮して交感神経と呼ばれるものを過剰にはたらかせます。いわば精神的苦痛を生じる場面は人体にとって緊急事態のようなものです。緊急に備えて体の機能を活発にするアクセルに該当する交感神経を過剰に働かせるため、血管が収縮をします。この血管収縮が血流を悪くして痛みの発現につながるのです。
したがって痛みは情動の変化を起こす。情動の変化は痛みを起こす両者は相関関係があると言えます。

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心理的な痛みの現状:情動の変化を薬で安定化させても痛みはしつこく繰返す。にも関わらず抗不安薬の処方を受けるだけの患者は多い

このような情動の変化を痛みは生じさせますので今現在病院に足を運びますと、慢性腰痛をお持ちになられている多くのご高齢者が精神安定薬の処方を受けております。

くすり

そして、この精神安定薬・抗不安薬の作用によって本当に一時的に痛みが治まるケースもあります。

ところがこういった薬で無理矢理に精神を安定させてもやはり痛みはしつこく繰返します。そのため病棟には抗不安薬を求めて、今も休むことなく山ほどの患者が病院に通院して薬の処方を受け続けているのです。

「もう歳だし、根本的な治療よりも安らかに過ごしたい」
ということで痛みの治療よりも目先の除痛のためだと割り切って通院されている方は多くに上ります。

つまり、情動の変化を薬で改善しても結果的には痛みは治らないため、さらに一歩踏み込んだ痛みの究明が求められるわけです。

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痛みの新たな捉え方:患者の疼痛行動も含めて痛みと捉える

そこで近年着目される痛みの捉え方が、患者さんが持っている疼痛行動も痛みに含めた考え方です。

痛み行動従来の考え方では痛みを単なる疼痛刺激として捉えました。そして一歩踏み込んだ考え方が「情動」着目した考え方、さらに一歩踏み込んだ考え方が疼痛行動です。

皆さんは腰が痛くなったときに治療院で疼痛刺激を抑えてもらおうと通院して治療を受けられます。そして、痛みが緩和出来なかったときに精神安定剤などで不安を取り除いて痛みを抑えようとされます。

しかし、根本的に改善しないといけないのは疼痛行動です。患者が持ち合わせている痛みによって生じさせる特徴的な行動のことです。また、痛みを引き起こす直接的な行動のことだと思ってください。

荷物を持ち上げてぎっくり腰

例えば重たい荷物を持ち上げるときに腰を引いたまま荷物を持ち上げて、腰を痛めたとしましょう。この方が治療院に通って腰の疼痛刺激を緩和する治療を受けました。

当然のことですが痛みは緩和されます。しかし、腰を痛めたときの恐怖心が残っているためもとの作業に復帰することができません。

そこで次に精神安定薬で恐怖心を和らげます。これで恐怖心は麻痺します。しかし、恐怖は紛れますが、それでも作業に復帰したくはありません。根本的な間違った方法がなぜなのか分かりませんので
「重たいものは持てないのだ。非力だから腰を痛めたのだ」
という間違った思い込みを抱いていることもあるでしょう。

そこで、根本的な間違った動作方法や荷物を持ち上げているときの正しいフォームについてのアドバイスをします。

間違った動作が何だったのかを知ることが出来れば本人は同じ過ちを犯すことがありませんので結果的に安心して現場に復帰できるというわけです。そして間違った動作を繰返しませんから腰痛は二度と起こることなく根本的に治癒するわけです。

安心

また、腰痛を患った方ではこういった直接的に重たい荷物を持ち上げて発生したような原因のハッキリしているものばかりではありません。本人が「なぜ?」と思うぐらいハッキリしない原因も沢山あります。

疑問きっかけの分からない痛みでは何をどうして良いのか分かりません。そのため、闇雲に身の回りのものごとをシャットアウトして自閉症のように引きこもりがちになって行きます。

閉じこもる何をしたら腰が痛くなるのか分かりませんので自宅に引きこもって全ての物事を遠ざけてしまいます。

すると痛みそのものは起こりません。しかし、塞ぎこんだ生活をすることで経済的に貧困に陥ったり、働いてお金を稼げませんから、税金の支払いが出来なくなったり、公的なサービスを利用できなかったり、娯楽や遊行などの趣味をもてなかったり、突然交通事故や病気を起しても長期入院や手術など、万一の事態に備えるだけの預貯金もありませんので常に不安におびえて暮らすようになります。

また車ももてません。友達や恋人を作って遊びに行ったり楽しむこともできません。当然ですが結婚や就職も困難になります。そして社会経験が乏しくなったり、人との交流を避けるために社会性が成長することもありません。仮に他人と接しても至るところで人間関係が上手く行かないものです。

すると益々行動が消極的になって行きます。

運動不足また、活動性が無くなることで運動不足に拍車が掛ります。硬くなった腰、力の衰えた足が容易に腰痛を引き起こすようになります。

こういった患者の腰痛に伴う、特徴的な行動のことを疼痛行動と呼び、これらも含めて腰痛と捉える考えが治療には大切になるわけです。

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新たな治療の着眼点:疼痛行動も含めて治療する考え方を認知行動療法

ではどうやってこの患者の持っている疼痛行動を正して本来のあるべき状態にして行けるのか?

新たな着眼点が認知行動療法です。

認知行動療法とはどういったものなのか?

例えば先の荷物を持ち上げてぎっくり腰になったケースを例に挙げます。

すると、間違った腰の引けた持ち上げ方によって腰を痛めたわけですから、当然のことですが本来なら持ち上げるときのフォームを正すことが再発防止策であり根本治療です。

ところが患者さんはここに認知の歪みを持っております。どういった認知の歪みなのか?それはフォームの問題ではなくて
高齢者だから腰を傷めてしまった
という認知の誤りだったり、
女だから腰を傷めてしまったのだ
という誤りだったり、
運動不足だから腰を痛めたのだろう
という誤りだったりします。患者さん本人はこの認知の歪みによって
「もう二度と持ち上げることは出来ないだろう。無理に持ち上げれば腰を間違いなく痛めるだろう」
という認知を抱いております。

そこで間違った認知がどこにあるのか?実例を持って教えます。
「私はAさんよりも10歳も年上の女です。今から荷物を持ってみますから見ていてください。」
このときに正しいフォームと持ち上げるときのコツを教えます。そして実際にやってみせるわけです。

こうして認知のゆがみに気が付いてもらいます。

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認知行動療法の内容:認知のゆがみに気づいたら、実際にフォローしながら動作を体験してもらう。

そして認知行動療法ではもっと大切なのが患者さんに実際に腰痛の原因となった動作を実際に体験させ、行動をもって正しい方法を習得してもらうことです。

実際に指導したとおりのフォームで持ち上げられるのかを入念にチェックします。最初は腰に負担が加わらないように治療者が患者さんの体を支えながら安全に配慮してフォームを実体験してもらうわけです。

こうして行動を通じて正しい方法を学習して、行動を改善する。これも認知行動療法の一つです。実際にはもっと多岐に渡る治療法が行われます。

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治療の考え:患者の行動を改善せずして成し得る治療はない。

私自身が整体師として体験している中で感じることは、どれほど治療家が手を掛けようともやはり患者自身が自分の間違った日常の行動に気が付かなければ、治療効果は長続きしないということです。患者さんが間違った行動に気が付いて主体的に行動を改善すれば治療家が何度も手を加えなくとも自然と良い体の状態が保たれて、持続的に良い状態で過ごせることでしょう。

幸せ

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まとめ

まとめです。

  1. 治すためには痛みが何であるかを知ることが必要
  2. 痛みは電気的な刺激である疼痛刺激のことだけではない
  3. 痛みは感情の変化を伴うが感情だけを操作しても治らない。
  4. 腰痛を患うものは必ず腰痛を起す疼痛行動を起しており、疼痛行動を含めて痛みとして捉える。
  5. 疼痛行動は多くの場合、認知の歪みを引き起こし治療を複雑化している。
  6. 認知行動療法によって認知のゆがみに気が付いてもらい正しい行動を学んでもらうことが必要。
  7. 患者の行動にアプローチしないとどんな治療も治らない。

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